伝承音楽と楽譜、CDお知らせ

平日の朝「ピンポーン」という音で目が覚めました ご近所さんがおかしいと思ってインターフォンをならしてくれたんです。子どもの学校からも電話がかかってきました。この数日、深夜にCDを作っていて朝起きれなかったんです。子どもが「あれー、目覚ましならへんかった」と。そりゃそうです。前の日にOFFにして寝たのは私です。

「CD作らないの?」とよく聞かれていたのですが、初期費用がかかるし納得いく音に出会ったことがない(レコーディングのこと)、選曲もデザインもこだわりたい、楽譜も付けようかとか、リクスペルマンになったときに記念に作りたいとか…そんなこんなで考えていませんでした。それに素朴な伝統音楽は目の前で空気感を楽しむライブが一番とも思います。新鮮なお刺身と同じです。

でも、結局作ったんです。続きは後半で書くとして、今日はまじめに楽譜の話をまとめたいと思います。

フォーク(伝統音楽)と楽譜の関係

スウェーデンの伝統音楽は、フォーク、民俗音楽、伝承音楽ともいいますが、譜面を使わない口伝の音楽です。楽譜を書いたり読んだりする知識がない村の奏者によるものが多数を占めます。

ノートブックnotbok(楽譜集)も多数ありますが、覚書き、メモのようなもので、細かな音符や指示、曲名、誰が作ったのかそれとも伝承曲なのかも書かれていません。

こうした曲は、経験がない場合、楽譜だけで曲を覚える(学ぶ)のはとても難しいです。「楽譜を見て弾いて、後で原曲を聞いてあまりの違いに愕然とした」、はたまた「別の人は1小節多い」「あの人は1拍多い(変拍子!?)」「シャープ♯で弾く人とそうじゃない人ががいる?」と混乱してしまう話はよく聞きます。譜面で書き表すことが難しいリズムが多いです。地域によっては半音の半分の音(微分音)を使うのですがメモ書き程度の楽譜では分からなかったりします。

では、スウェーデンのフォークでは、楽譜は使わないのかというとそんなことはありません。私も数千曲の楽譜を持っています。スウェーデンの伝統曲は10万曲以上あるそうです。

楽譜の使い方

スウェーデンの伝統音楽では、楽譜はメロディの基本だけ分かるようできるだけシンプルに書かれます。リズムは地域や奏者でそれぞれなので、知っている前提ではっきりと書かないのです。つまり、地域やダンスから推測して補うのです。

パート別のアンサンブルを編曲するといったものでなければ、楽譜は「既に知っている曲を書き留めた備忘録」としての使い方が主流です。曲がぱっと思い出せないからと「出だしだけイントロ楽譜集」を自作している人もいます。地域やダンスで分類したい、収集が趣味、所属グループのレパートリー集をつくる記録係とか、それぞれの理由で楽譜を書いたり集めたりする人は沢山います。

楽譜にきちんと書かない訳

一つは、地域名、ダンス名、誰が伝えたのか(奏者の名前)、この3つがあれば推測できる部分が大きいからです。
それと、もう一つの理由は「ダンスの伴奏」なので、「その場に合わせたライブミュージック」が基本だからです(と、私は思うのです)。

レッスンで「ここのボーイング(弓使い)は?」と聞くと、スウェーデン人の回答は「弾く度に違うので分からない」「好きにしたら」「意識したことがない」「自分がどう弾きたいかで変わる」というのがほとんどかなと思います。(ただし、基本を知っていることが前提です)。

装飾音についても同じです。装飾音をどういれるのか?と聞けば、弓使いの時と同じような答えが返ってきます。

では、弓使いも装飾音も自由にしてい良いのか、というと、そんなことはありません。前にも書きましたが、基本を分かっていることが前提の上で自由があります。

去年11月に来日したダニエルは「ダンスの達人である必要はないけど、音の一つずつが体の動きと関連しているから、曲と体の動きの基本的な部分を理解しておかないといけない」と言っていました。

それでも楽譜から曲を覚えたい場合

一人の奏者(古い奏者)、一つの地域に絞って音源を利用して、ある程度の基本を身につけたら、楽譜だけ見ても推測できるようになると思います。

たまたま見つけたこの曲、弾きたいな。私もそういうことはよくあります!とにかく、その曲の地域、奏者、知らなければどんなダンスなのかを動画検索で見たり、同じ地域の似た曲でもいいので探して聞きます。私はそのために資料だと思ってたくさんCDを買っていますが、ネットもかなり充実しています。できるだけ地元奏者や愛好家の演奏の動画を探します。特徴をつかむにはシンプルなものがおすすめです。(アーティストもの、バンドものは基本を身につける段階ではお手本にしません。)また、旅行感覚でスウェーデンに行ってちょっと習うこともできます。

楽譜を入手するには/楽譜集の紹介

ネットなら
1.folkwiki、また、Blue Rose(運営が個人?なのか不明なのでリンクはのせませんがアメリカのサイトです。来日講師の演奏が楽譜とともに掲載されている曲もあり、参考になります)も充実しています。

2.各地のステンマ(フォークミュージック・フェスティバル)はイベントの大小関係なくアルスペル曲(Allspel låtar 皆で弾く基本の曲)が10曲ほど公開されます。誰もが参加しやすいよう、その地域の定番曲を載せています。例えば、スウェーデンで最大規模のステンマ、BingsjöstämmanでもAllspellåtarのリストで楽譜が掲載されています。

3.ストックホルムのVisarkivetで保存する1700-1800年代など古い楽譜集はスキャナーでPDF化されており、検索するとネット閲覧できます。最近webサイトがリニューアルされたようです。The collection of the folk music commision (他の地方で保存されているものは見れません) よく演奏される楽譜集の名前を挙げると、Andreas Dahlgren, Andreas Höök, Petter Dufva, Blomgren, K.P. Leffler, Einar Övergaard,…等々。その人たちが書き留めた(または集めた)楽譜集です。古い楽譜集に写真や解説を加えて近年出版されたものもあります。

4.それぞれのスペルマンスラーグのサイト ※スペルマンスラーグは地元のアマチュア演奏家グループ。(名前はたいてい、地名+Spelmanslagで、大きな地方の名前もあれば小さな町の名前もあります)下記8を参照。

本なら ※私は、現地で買う、知り合いにもらう、ネットで買う、ネットの古本屋antikvariatで探す、などで入手しています。

5.Svenska Låtar:100年近く前、地方を周って曲を収集したもので、地域別に全20巻。バイブルのような存在です。奏者の写真やプロフィールも掲載。ただし、北部は含まれません。以前は、ストックホルムの音楽博物館で買えましたが名前も建物も代わりました。私はリニューアル後行ったことありません。Scenkonst museet (Swedish museum of performing arts) または、上記3のVisarkivetからメールで取り寄せて本を買えます。本より送料のほうが高くなるのが難点…。

6.Svenska Folkdanser del 1, 2:グリーンブック、ブルーブックと呼ばれ、ダンスの解説と楽譜がセットです。地域別に豊富な曲、ダンスの種類が網羅されているので基本の楽譜集ともいえます。音楽関係よりも、ダンス関係で買う機会があります。ダンス組織はFolkdansringenと言い、このサイトでこの本の注文についてのページがあります

写真は私の本棚より、Einar Övergaards folkmusiksamlingの中を紹介。CDを見ていて曲名の後に、SvLの何番、の何番と記載があれば、Svenska LåtarやEinar Övergaardの略で本の楽譜番号のことです。

7.Slatta:Svenska Låtarには北部がないと言いましたが、ヴェステルボッテン地方については、その地域のアーカイブ(資料館のようなところ)が相当に分厚い楽譜集Slattaを出していますが既に販売終了のようです。

8.各地のスペルマンスラーグが販売する楽譜集:スペルマンスラーグのサイトを見ると、自分たちのレパートリーの楽譜もあれば、その地域の古い資料的な楽譜集の再販をしている場合も。ちなみに、ニッケルハルパの定番、Byss-Calleの57曲の楽譜集は、Uplands Spelmansförbundで買えます。

ここに書ききれなかった楽譜はまだまだあります。ぜひ楽譜を有効活用してくださいね。スウェーデンの伝統音楽のバライエティ豊かな面にさらにはまることを願って…。


 CDの話の続き

音のサンプルはSoundcloudで3曲聞けます。

ヴェーセンのOlovにレコーディング用リボンマイクのことを聞いたら、意外に手が届く価格ということが分かったんです。ちょうどその頃「私が生きているうちに作ってよ」とパンチの聞いた一言もいただきまして 簡易版ならすぐに作れるかも、という気に。

重ね録りをしてみたのですが、自分が2人って意図が明確になるんだなって実感。この世に私みたいな人がいっぱいいたら大変なことになる、とよく言われますが、音だと困ったことにはならないんですね。

でも、難しかったのは、目や表情や動きが見えないので呼吸が合わせにくい。とにかく耳で聞いて合わせました。ですが、これが中々…。自分が意外に予想外の動きをするんですよね。なんでそこでそう突っ込む!?と、一人コント状態?で先に進みません。そんなこんなで1曲につき20テイクくらいやり直し続けて、最後は頭が回らなくなりました。CDを聞いた方に、控えめで上品だったと言われましたが、なるほど、普段はもっと荒くれているのでしょうね。

音は何も触らずマイク2本の音量バランスの調整のみです。こだわればもっと音は良くなると思いますが、響きは生の音に近いと思います。選曲とデザインはできるだけシンプルに。

お知らせ

2/22(金) 奈良ホテル 創業プレ110周年特別記念イベント <グルメとワインの祭典>にて、ハープとニッケルハルパで

創業110周年という歴史と格式のある奈良ホテルにて、ハープの奈未さんと一緒に演奏します。アインシュタインが弾いたピアノが置いてあったり、オードリー・ヘプバーンが宿泊した時の写真があったり、時間が止まったかのような空気を感じる歴史ある佇まいのホテルです。ワイン50種が楽しめるという予約制ビュッフェ。料理もおいしそうです!打合せでは、紅茶、食事など北欧を取り入れられるか検討中ですとのことでした。ご予約は、奈良ホテルまで。

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